ITエンジニアとしてのコミュニケーション能力について

目次
■ 導入
「ITエンジニア」と聞くと、PCに向かって黙々とコードを書く、そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。実際、私自身もエンジニアになる前は「技術職だから対人スキルはあまり必要ないのでは?」と考えていました。
しかし、実際に現場に立ってみると、その考えは大きな誤解だったと気づかされました。システム開発や運用の現場では、チームメンバーとの情報共有や、上司との方針確認、さらには他部署や顧客とのやり取りなど、意外なほど多くの会話や説明の機会があるのです。
今回は、そんな経験を踏まえて、ITエンジニアに求められる「コミュニケーション能力」の重要性と、その具体的な場面、さらにはどうすればそのスキルを高められるかについて、自分なりの視点で整理してみたいと思います。
■ コミュニケーション能力が求められる理由
IT業界においては、プロジェクト単位で業務が進むことが多く、その多くはチームでの開発が前提となっています。一人で完結する仕事は少なく、設計・開発・テスト・リリースといった工程を複数人で分担する以上、「正しく情報を伝える力」は極めて重要になります。
● 情報共有が成果を左右する
例えば、仕様の確認や進捗報告、課題の共有などを怠ると、後々の工程で大きな手戻りが発生します。小さな認識のズレが重大なバグやトラブルの原因になることもあります。
● リモートワーク時代の課題
最近では、リモートワークが主流になりつつあります。対面であれば身振りや表情で補える部分も、テキストやビデオ会議だと限られた情報でしか伝えられません。相手に「誤解されないように話す」「質問しやすい空気を作る」といった配慮が、より強く求められています。
● 顧客・他部署とのやり取りも重要
私自身はまだ頻繁に顧客対応する立場ではありませんが、上司や先輩を見ていると、エンジニアであっても外部との調整や交渉が頻繁に発生していることがわかります。もはや「黙ってコードだけ書いていればいい」という仕事ではないのだと実感しています。
■ エンジニアに求められる具体的なコミュニケーションスキル
エンジニアが業務を円滑に進める上で、特に重要だと感じるスキルをいくつか挙げてみます。
● 技術的な内容をかみ砕いて説明する力
エンジニアの会話は、どうしても専門用語や抽象的な概念が多くなりがちです。社内の他メンバーや、技術に詳しくない顧客に対しては、できるだけ噛み砕いて、例を交えて説明する力が求められます。
特に、自分の書いたコードを他のメンバーに引き継ぐときや、設計方針を説明するときに、この力が弱いと意思疎通に時間がかかり、結果としてチームの生産性が下がってしまいます。
● 報・連・相(報告・連絡・相談)の徹底
プロジェクトを進めるうえで「報連相」は非常に基本的ですが、意識して徹底しないと疎かになりがちです。特に新人の頃は「これは報告すべきことなのか」と迷うこともありますが、少しでも不安を感じたらまずは相談してみることが重要です。
■ 失敗から学ぶ:伝達ミスの怖さ
私が経験した中で印象的だったのは、「技術的なミス」よりも「伝達ミス」でトラブルになったケースです。
あるとき、仕様変更が発生したにもかかわらず、担当者同士で共有がうまくされておらず、古い仕様のまま実装が進んでしまったことがありました。原因は、言ったつもり・伝わったつもりになっていたこと。言葉にして伝えるだけでなく、きちんと相手が理解しているかを確認する姿勢が欠かせないと痛感しました。
■ どうすればコミュニケーション力を鍛えられるか?
● 結論から話す癖をつける
よくあるのが、質問されたときに答えをすぐ出さず、背景や関連情報を長々と話してしまうパターンです。私自身もやってしまいがちなのですが、「で、結局どうなの?」と思われてしまうと、信頼を損ねる可能性もあります。
まずは結論から伝え、それに続けて必要な情報を補足する。この基本を意識するだけでも、会話の質はかなり変わります。
● フィードバックをもらう
先輩や上司とのやり取りのあとに、「わかりやすかったかどうか」「話しすぎていなかったか」などを軽くフィードバックしてもらうのも、自分を客観視する助けになります。
● 他人のやり取りを観察する
特に説明が上手な先輩や、会議で場を仕切っている上司の話し方をよく観察してみると、言葉の選び方や、聞き手の理解度に合わせた伝え方の工夫が見えてきます。「話し方を学ぶ姿勢」もスキルアップにつながると思います。
■ まとめ
ITエンジニアに求められるスキルは、日々進化する技術だけではありません。むしろ、その技術をチームや顧客とどう共有し、形にしていくかという「伝える力」こそが、プロとしての価値を高める鍵だと感じています。
技術力に加えて、円滑に意思疎通できる力を持ったエンジニアは、プロジェクトでも信頼され、チームにとって欠かせない存在になっていくはずです。