AI時代でもエンジニアが基礎を学ぶべき理由
生成AIの普及によって、エンジニアの仕事の進め方は大きく変わってきています。
分からないエラーを質問したり、コードのたたき台を作ってもらったり、既存コードを説明してもらったりと、これまで時間をかけて調べていたことを短時間で進められるようになりました。
実際に、生成AIを使うことで開発や調査の効率が上がったと感じている方も多いのではないでしょうか。
一方で、AIがコードを書いてくれるのであれば、
「これからはプログラミングの基礎を覚えなくてもいいのでは?」
と考えることもあるかもしれません。
しかし、個人的にはAIが便利になった今だからこそ、基礎知識の重要性はむしろ高くなっていると感じています。
今回は、AI時代でもエンジニアが基礎を学ぶべき理由について考えてみます。
目次
AIが出した答えが正しいとは限らない
生成AIは非常に便利ですが、常に正しい回答をしてくれるわけではありません。
一見すると問題なさそうなコードでも、
・存在しない関数を使っている
・使用しているバージョンに対応していない
・必要な処理が抜けている
・セキュリティ面に問題がある
・既存仕様と合っていない
といったことがあります。
ここで基礎知識がまったくないと、
「このコードは正しいのか」
を判断することが難しくなります。
反対に、基本的な文法や処理の流れを理解していれば、
「この条件分岐はおかしいのではないか」
「この変数は初期化されていない」
「この処理だと別のケースで問題が起きそう」
といった違和感に気づくことができます。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、その答えを確認するための知識が必要になります。
「動いた」と「正しい」は同じではない
AIが生成したコードを実行して、問題なく動いたとします。
その時点で、
「動いたから大丈夫」
と判断したくなることもあります。
しかし、プログラムは一度正常に動けばよいというものではありません。
たとえば、
「特定の入力ではエラーになる」
「データが増えると処理が遅くなる」
「同時に複数人が操作すると問題が起きる」
「別の機能に影響が出る」
といったケースもあります。
基礎的な知識があれば、
「この処理は他の条件でも問題なく動くのか」
「異常な値が入った場合はどうなるのか」
と考えることができます。
AIにコードを書いてもらう場合でも、
動作確認だけでなく、そのコードの仕組みを理解すること
が重要だと思います。
エラーが起きたときに原因を追えなくなる
AIを使えばコードを書くことはできます。
しかし、実際の開発ではコードを書く時間だけでなく、
「なぜ動かないのかを調べる時間」
も多くあります。
たとえば、
「画面にデータが表示されない」
という問題が起きたとします。
原因としては、
・画面側の処理
・API
・データベース
・ネットワーク
・設定ファイル
・認証や権限
など、さまざまな可能性があります。
基礎知識があれば、
「まずデータが取得できているか確認しよう」
「APIまでは正常だから画面側を確認しよう」
というように原因を切り分けられます。
しかし、AIが生成したコードをそのまま使っているだけでは、問題が発生したときに、
「どこを確認すればよいのか分からない」
という状態になりやすくなります。
AIは原因を調べる手助けをしてくれますが、問題の状況を整理し、どこを確認するか判断するためには、基本的な仕組みを理解しておく必要があります。
良い質問をするためにも知識が必要
生成AIから良い回答を得るためには、質問の仕方も重要です。
たとえば、
「プログラムが動きません」
とだけ伝えるよりも、
「APIからデータは取得できていますが、画面に反映されません。レスポンスの内容は正常なので、表示処理に問題があると考えています」
と伝えた方が、より具体的な回答を得やすくなります。
このような質問をするためには、
「APIとは何か」
「どこまで処理が進んでいるのか」
といった基本的な知識が必要です。
つまり、知識があるほどAIに対して具体的な指示を出せるようになります。
生成AIを使いこなすためにも、ある程度の基礎知識は必要なのだと思います。
AIに任せる部分を判断するためにも基礎が必要
すべての作業をAIに任せればよいわけではありません。
たとえば、
・簡単なコードのたたき台
・テストコードの作成
・エラー原因の候補出し
・コードの説明
・リファクタリング案の作成
などは、AIを活用しやすい部分です。
一方で、
・システム全体の設計
・セキュリティに関わる判断
・本番環境への影響確認
・業務仕様に関わる判断
・障害発生時の対応
などは、人が内容を理解したうえで判断する必要があります。
基礎知識がなければ、
「これはAIに任せてもよい作業なのか」
という判断自体が難しくなります。
AIを使うための知識と、AIに任せないための知識。
どちらもエンジニアには必要だと思います。
基礎は新しい技術を学ぶときにも役立つ
IT業界では、新しい技術が次々と登場します。
しかし、すべてがまったく新しい考え方というわけではありません。
たとえば、プログラミング言語が変わっても、
・変数
・条件分岐
・繰り返し処理
・関数
・データ構造
・エラー処理
といった基本的な考え方には共通する部分があります。
基礎を理解していれば、新しい言語やフレームワークに触れたときにも、
「この書き方は違うけれど、考え方は同じだな」
と理解しやすくなります。
AIを使えば新しい技術のコードもすぐに生成できますが、その内容を理解するためには、やはり土台となる知識が必要です。
技術が変わっても使える知識を身につけておくことは、長い目で見ると大きな強みになると思います。
AIは「学ばなくてよくなるツール」ではない
生成AIが登場したことで、
「覚えなくてもAIに聞けばいい」
という場面は確かに増えました。
私自身も、すべてを暗記する必要はないと思います。
分からないことは調べればよいですし、AIを使って理解を助けてもらうこともできます。
しかし、
「覚えなくてもよい」
ことと、
「理解しなくてもよい」
ことは違います。
たとえば、関数の細かい書き方を忘れていても、調べれば確認できます。
一方で、
「この処理が何をしているのか」
「なぜこの方法を使うのか」
という考え方そのものが分からなければ、AIが出した答えを評価することができません。
そのため、AIは学習を不要にするものではなく、
学習を効率化してくれるツール
として使う方がよいのではないでしょうか。
AIを使って基礎を学ぶという方法もある
AIと基礎学習は、どちらか一方を選ぶものではありません。
むしろAIを使うことで、基礎学習を進めやすくすることもできます。
たとえば、
「このコードを初心者向けに説明してください」
「この処理がなぜ必要なのか教えてください」
「この書き方と別の書き方の違いを教えてください」
「このエラーが発生する仕組みを説明してください」
と質問することで、単に答えを得るだけでなく、仕組みを理解するためにも活用できます。
分からない部分をすぐ質問できるため、参考書やドキュメントだけでは理解しづらかった内容を補うこともできます。
AIにコードを書かせるだけではなく、
AIに教えてもらう
という使い方も、これからの学習方法の一つだと思います。
まとめ
生成AIの普及によって、エンジニアがコードを書く方法や、問題を調査する方法は大きく変わっています。
これまでよりも短い時間でコードを作成したり、分からない内容を調べたりできるようになりました。
しかし、AIが便利になったからといって、エンジニアの基礎知識が不要になるわけではありません。
むしろ、
・AIの回答が正しいか判断する
・エラーの原因を切り分ける
・良い質問をする
・AIに任せる範囲を判断する
・新しい技術を理解する
ためにも、基礎知識は重要です。
これからは、すべてのコードを一から自分で書くことよりも、AIが生成したものを正しく理解し、必要に応じて修正できる力が求められる場面が増えていくかもしれません。
だからこそ、
「AIがあるから基礎を学ばなくてよい」のではなく、「AIを使いこなすために基礎を学ぶ」
という考え方が大切なのではないでしょうか。



















