既存手順書作業で失敗しないコツ:操作の「背景」を理解する重要性

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【導入】

インフラエンジニアの現場では、日々の業務を多くが「手順書」に基づいて進められます。サーバ構築、パッチ適用、ネットワーク設定など、複雑かつ正確性が求められる作業をミスなく進めるためには、標準化された手順書が必要不可欠です。

しかし、手順書があるからと言って「その通りに作業を進めれば、絶対にうまくいく」というわけではありません。私自身、未経験からインフラエンジニアとして現場に立つ中で、何度も痛感したのは「背景を理解せず手順通りに作業すると、想定外の問題に直面したときに対応できない」という事実です。

この記事では、手順書作業で失敗を防ぐために、背景理解がなぜ重要なのか、そして具体的にどんな工夫をすればいいのか、実体験を交えてご紹介します。

【本文】

❶.手順書通りに作業しても失敗する理由

そもそも、なぜ手順書通りに進めてもミスが起きるのでしょうか
大きな理由は以下の3点です。:


@前提条件が現場と異なる
手順書は特定の前提環境(OSバージョン、ネットワーク構成、使用ソフトウェア)を基に作られています。しかし、現場の実環境ではその一部が異なることがあり、そのズレに気づかないと、手順通り進めた結果エラーが発生します。

@例外パターンに対応できない

手順書はあくまで「標準パターン」の説明が中心であり、例外ケースや予期しない動作、状況まで網羅されてない事がほとんどです。

@手順の意味を理解していない

操作の意図や背景を理解していないと、トラブル発生時に「次に何を確認すべきか」「どこが影響範囲か」がわからず、復旧が遅れます。

私もActive Directoryの権限設定作業中、手順書通りに設定を行ったものの、現場環境では一部設定がバッティングしており、ログイン不可状態を引き起こしてしまった経験があります。

このとき、事前に設定の背景や依存関係を理解していれば、防げたと強く感じました。

❷.背景理解の具体的なステップ

では、手順書作業で失敗しないために、どのように背景理解を深めればよいのでしょうか。
私が実践している具体的なステップをご紹介します。

1.作業対象の全体構造を理解する

作業対象がサーバなら、そのサーバがどのシステムの一部なのか、依存している他システムは何か、ネットワーク構成はどうなっているかを確認します。

2.操作の目的・効果を調べる

例えば「この設定を変更する事で、どんなサービスが有効化されるのか」「このパラメータはどのプロセスに影響を与えるのか」を調べます。

3.作業の前後の流れを把握する

単一の操作だけに注目せず、作業全体の流れを理解することで、途中で問題が起きた際に「何を巻き戻せば良いか」「何を再確認すべきか」を判断できます。

4.失敗パターンを事前に確認する

過去の障害事例や、社内ナレッジに目を通しておき、失敗しやすいポイントを頭に入れておきます。

❸.実践例:手順書作業の失敗を防いだケース

​私が特に背景理解の重要性を感じたのは、AWS環境での検証環境構築の作業です。
手順書には「EC2インスタンスを起動し、セキュリティグループを設定」という記述があり、指示通りに進めていました。しかし、過去の失敗事例に基づき「このセキュリティグループではVPCのルートテーブルとバッティングする可能性があると判断し、上長に事前に拝啓内容を確認しました。結果、VPCの設計変更が必要なことがわかり、未然に通信傷害を防ぐ事ができました。

このように、ただ指示通り作業するだけではなく、「そもそも何のための作業か」「この操作はどこに影響を与えるか」を理解していることで、より高い精度と安全性を確保できます。

【まとめ】

手順書は、インフラエンジニアにとって強力な武器ですが、万能ではありません。その内容をただなぞるのではなく、「なぜこの操作が必要か」「どの範囲に影響を与えるのか」といった背景を理解することが、失敗を防ぐ大きな鍵になります。

未経験からインフラエンジニアになった私自身、作業ミスや障害対応を通じて、背景理解の重要性を痛感してきました。今後も、単なる手順実行者に留まらず、システム全体を俯瞰できるエンジニアを目指し、日々学び続けたいと考えています。