作業者からリーダーへ──私の軌跡

目次
第1章|現場で学び始めた頃
初めて現場に入ったときの状況
配属は最初から出向で、いきなり1人案件でした。
周囲はお客様(開発メンバー)のみで、私はプロダクトのQAとして参画。
任務はテスト設計とテスト実行、開発者が作ったテスト専用ツールの習得、そして顧客折衝でした。
自分の立ち位置と意識
最初は「教えられた通りにやる」段階。
まずはエクセル操作を覚えることから始まり、プロダクト仕様の把握 → ツールの習得 → テスト設計 → テスト実行…という流れで作業を進めました。
ただ、IT業界は初めてだったので、資料がエクセルベースであることや、テスト設計と実行を同時進行することにはかなり苦労しました。
現場の雰囲気とスピード感
職場はウェルカムな空気で、馴染むのが早かったです。
「こんなこともできないんですか〜?」とイジられるほど。
初めてながらも、一日のノルマを割ることはなく、大きな苦労は感じませんでした。
得た学び
現場で早く知りたかったのは、「この仕事で何が価値になるか」でした。
答えは明確で、不具合の検出・正確なテスト・結果の予測をしないこと。
技術的にも、開発者が「難しい」と言っていたツールのコマンドを短期間で覚え、使いこなせるようになりました。これは、教える側が上手かったおかげでもあります。
小さな成功体験
開発初期だったので、不具合は多く見つかりました。
報告基準は曖昧で、最初は「この報告は助かる」「これは不要」とよく指摘されましたが、やがて言われることも減り、初めてご飯を奢ってもらったのは嬉しい思い出です。
毎日のように一緒に食事をするようになり、**「自分も仲間だ」**と感じられるようになりました。
失敗や注意を受けた経験
- エクセル操作ができず驚かれる:「こんなこともできないんですか?」と笑われつつも、その人を好きだったこともあり、素直に覚えられました。
- 不具合の見逃し:開発者と一緒に確認しているときに明らかな不具合を見逃し、「おいおい」と言われたことも。
- 仕様理解不足による誤報告:自分の感覚で「不具合」と判断したものが仕様通りで、何度も訂正されました。
この頃はまだ、リーダーになるなんて想像もしていませんでした。
しかし、この経験が次の転機につながっていきます…。
第2章|転機となった出来事
想定外に長く続いた案件
最初に配属された案件は、本来1か月で終了予定でした。
しかし、結果として1年も続くことになります。
お客様が想定外に高く評価してくださった理由は、
- 多数の開発者との関係を築き、馴染めたこと
- 開発者が作ったテスト専用ツールを使いこなし、2つのプロジェクトをまたいで活躍したこと
特にこのテスト専用ツールは、コマンド操作が必要で習得難易度が高かったため、他者評価では「使いこなせる人は限られている」と言われていました。自分ではそこまで特別だと思っていませんでしたが、周囲からは大きな強みとして見られていたようです。
案件終了と社内評価の変化
自分が関わったプロジェクトの任務がすべて完了し、案件が終了。想像以上だったのはこの案件は古くからある案件で、過去何人も参画したのですが、1年も継続させたのは私だけだったそうです。
そのおかげで、1か月の予定を1年に伸ばした実績が社内で高く評価されていました。
予想外の人事
その結果、大規模拠点の出向現場に呼ばれることに。
そこでは最初からチームリーダーポジションで迎えられました。
しかも、その現場は大規模拠点の中でも会社の要となる重要案件。
そこでチームリーダーとして初めて挑戦させていただけることになったのは、私にとっても予想外であり、大きな転機となりました。
こうして、私は初めて“リーダー”という役割に挑むことになります。
第3章|自分なりの行動と工夫
初めてのリーダーポジション
この現場は、QAの大規模案件ばかりでした。
初めてのリーダーとしての挑戦に、私は「絶対に成功したい」という思いでいっぱい。
しかしそのあまり、周囲と協力することを考えず、自分を守ってくれる人の意見だけを聞き、作業者の方たちと衝突することもありました。
新人でありながらリーダーという立場、そして人間関係の立ち回りは正直ダメダメだったと今でも思います。
最初の案件で培った感覚を大切にし、それが自分の能力の差別化だと思っていました。
ただ、本音を言えば、周囲のペースに合わせる柔軟性も、自分がどんな状況になってもやっていける自信もありませんでした。
取り組んだこと
当時の私がまず目指したのは、「他者よりも1件でも多く不具合を挙げること」。
さらに、自分に主に任された仕事が不具合報告文の精査だったため、不具合処理に関わる作業を自分の武器にしようと決めて努力を重ねました。
工夫したコミュニケーション
私が意識した唯一の工夫は、教えてもらう立場では何を言われても我慢することでした。
特に不具合報告文の作成は想像以上に難しく、通用せず、毎日のように苦言を受け続けました。
精神的にもかなりきつかったのを覚えています。
小さな改善の積み重ね
最終的には、プロジェクトリーダーに不具合報告文を精査してもらい、通ればOKという形に。
リーダー陣やプロジェクトリーダーの指摘を一つずつ実現し、改善を重ねていきました。
「才能がない」と言われたこともありましたが、時が経つにつれて文章はリーダー陣好み、さらには拠点全体が好むレベルになり、指摘は減っていきました。
この時の気づき
最初は毎日ノルマもこなせず、怒られ続けて絶望していました。
それでも一生懸命に覚えていくうちに、不具合報告の処理関連作業が自分の最大の武器になっていたのです。
周囲を見る余裕ができると、いつの間にか「不具合報告の処理を一任できる人」として信頼を得ており、どのリーダーと組んでも頼られる存在になっていました。
この仕事を通じて、確実に信頼を勝ち取れる力を身につけたと感じています。
第4章|周囲の反応と役割の変化
信頼される存在へ
あのしんどい経験をやり通した頃、意外な事実に気づきました。
私が続けていた仕事は、実はみんながやりたくない&苦手とする作業だったのです。
だからこそ「やってあげる」と言うだけで、自然と信頼を勝ち取れました。
さらに時が経つにつれ、その評価は現場全体に広まり、チームを任される立場に。
肩書きとしての「チームリーダー」ではなく、実質的にもチームを引っ張る本当のリーダーへと変わっていきました。
役割の広がり
難易度の高いスキルを身につけたことで、その他の技術習得は格段に楽になりました。
自分の武器を周囲に見せ、それを教えることで、信頼はより盤石なものに。
次第に、自分だけではなくチーム全体のスキル底上げを意識するようになりました。
評価の高まり
一度チームリーダーとして成果を出すと、評価の上がり方は想像以上に早いものでした。
気づけばお客様も含めて、現場で私を知らない人はいないほどに。
最終的にはお客様から直接指名される存在となり、MVPを受賞することができました。
自分の中の変化
リーダーとして、そして社会人としての自信がつきました。
チームの判断も迷わず進められるようになり、人生の中でも誇らしい時期だったと思います。
一方で、人の気持ちに寄り添い、相手の立場を考えて発言する力は少し低くなってしまったかもしれません。
リーダーとしての成長と同時に、自分の課題も見え始めていました。
第5章|リーダーになって見えた景色
やりがいを感じた瞬間
リーダーとしてのやりがいは、新しい技術を習得することでした。
関わる人が増えるほど、自分が身につけたスキルや知識の価値が大きくなり、それを活かせる機会も増えました。
「自分の力が現場全体に影響を与えている」と実感できるのは、何より嬉しい瞬間でした。
想像以上に大変だったこと
しかし、その立場にたどり着くまでの人間関係は、本当に大変でした。
心無い言葉をかけられることも多く、何度もあきらめそうになったことを覚えています。
技術面よりも、人との距離感や信頼関係づくりに苦労した日々でした。
成功の裏にある課題
活躍できるようになると、周囲は私の指示に我慢して従ってくれていたのに、その気持ちを忘れてしまいました。
いつの間にか、自分の活躍や出世だけを考えるようになっていたのです。
職場の風潮もあり、衝突は増え、「人間性が良くない」という評価が長く続きました。
どれだけ成果を出しても、評価が上がらない時期が続いたのは、この姿勢が原因だったのかもしれません。
視点の変化
それでも、多くのポジションを経験したことで、問題解決能力は格段に向上しました。
状況を俯瞰し、理論的に解決策を導く力が身についたのです。
また、この経験は技術面だけでなく、社会人としての人間関係構築の力にもつながっていきました。
第6章|まとめとこれからのヒント
振り返って見えたこと
振り返って感じたのは、「これが欲しい」と一つのことだけを強く思うと、自分のおかれている状況が見えづらくなるということです。
今ではYouTubeなど、リーダーの姿勢や考え方を学べる環境は身近にたくさんあります。
自分だけで考えて突き進むよりも、外からの知識や視点を取り入れたほうが、無駄に壁にぶつかることは減ります。
また、自分の能力の把握は、できるだけ市場に近く、客観的に行うことが大切だと思います。
成長の鍵になったもの
成功した部分は、今後も同じように成功し続けられる可能性が高いです。
私の経歴を振り返ってもそう感じます。
一方で、課題は弱点をどう避けるか。
不利になる状況やつまずいた場面は、都度記録しておくと対策が立てやすくなります。
これからリーダーを目指す人へ
もし成長を意識するなら、自分が経験したことのない仕事にできるだけ多く挑戦することをおすすめします。
そうすることで、俯瞰的かつ客観的に自分を見る力が養われます。
「責任を押し付けられる」と感じる人もいるかもしれませんが、私が見てきた多くのリーダーは、結果が悪くなれば別の人を抜擢するなど、人の入れ替えを繰り返していました。
資格や高度な技術が必要な業種は例外ですが、それ以外では、責任を恐れるよりも結果を出すことに集中することが重要です。
まずは、他の人と差別化できる自分だけの武器を持つこと。
それは他者が苦手とするものであればあるほど有効です。
そして覚えておいてほしいのは、
- 自信を持って結果を出しても、消されるときは消される
- 失敗しても、評価が上がるときには上がる
ということ。
つまり、評価や責任は自分の感覚とは別のところで決まるのです。
だからこそ、自分の武器を磨き、結果を出し続けることが何より大切だと思います。