セキュリティ強化の要!Entra IDと条件付きアクセスポリシーで実現する安全な認証基盤

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クラウド活用が進む中で、企業にとって認証基盤のセキュリティ強化は喫緊の課題です。従来の境界型セキュリティでは不十分となり、場所やデバイスを問わずアクセスが行われる現代では「ゼロトラスト」の考え方が求められています。MicrosoftのEntra ID(旧Azure Active Directory)と条件付きアクセスポリシーは、このゼロトラストモデルの実現に大きく貢献するツールです。

Entra IDとは

Entra IDは、Microsoftが提供するクラウドベースのIDおよびアクセス管理サービスで、ユーザー認証、アプリケーションへのシングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)などの機能を提供します。これにより、企業はオンプレミスとクラウドの両環境で一貫したID管理を実現でき、従業員の利便性を損なうことなくセキュリティを強化できます。

条件付きアクセスポリシーの概要

条件付きアクセスポリシーは、アクセスするユーザー、場所、デバイスの状態、アプリケーションの種類などの条件に基づいて、アクセスを制御する柔軟なポリシーです。例えば、「社外からのアクセスにはMFAを要求する」「未管理デバイスからはアクセスをブロックする」といった制御が可能です。

この機能により、アクセスリスクをリアルタイムで評価し、適切な制御を動的に適用することが可能になります。結果として、セキュリティを強化しながら、業務効率を維持できます。

具体的な活用シナリオ

1. 社外アクセスのMFA強制

営業担当者やリモートワーカーが外出先から業務アプリケーションへアクセスするケースは日常的です。こうした状況では、アカウントの乗っ取りやセッションの不正利用といったリスクが高まります。Entra IDと条件付きアクセスポリシーを活用すれば、「信頼できないネットワーク」からのアクセスを検出し、自動的にMFAを要求する設定が可能です。例えば、特定の国やIPアドレス範囲からのアクセス時にだけMFAを強制するなど、柔軟な設定ができるため、利便性を維持しながらセキュリティを強化できます。

2. 管理デバイスのみアクセス許可

BYOD(Bring Your Own Device)を許可している企業にとって、個人所有デバイスからのアクセスは大きなセキュリティリスクとなります。条件付きアクセスポリシーを使えば、Intuneなどで管理されているデバイスのみアクセスを許可する制御が可能です。例えば、最新のセキュリティパッチが適用されていないデバイスや、アンチウイルスソフトが無効化された状態の端末からのアクセスをブロックできます。このような制御は、特に機密性の高い情報を扱う部門(経理、法務、研究開発など)において重要です。

3. 高リスクユーザーへの制限

Entra IDにはユーザーのログインパターンや行動に基づいてリスクを自動的に評価する機能があります。たとえば、通常と異なるIPアドレスや異常な時間帯でのアクセスがあった場合、そのユーザーを「高リスク」と判定します。条件付きアクセスポリシーでは、このリスク評価と連携して、該当ユーザーに対して追加のMFAを要求したり、特定のアプリケーションへのアクセスを一時的にブロックすることができます。これにより、サイバー攻撃や内部不正の兆候を即座に検知・対処することが可能となり、リアルタイムでのセキュリティ対応が実現します。

4. 特定アプリケーションへのアクセス制限

条件付きアクセスポリシーでは、Microsoft 365やSalesforce、ServiceNowなど特定のアプリケーションに対して個別のポリシーを適用することも可能です。たとえば、財務系アプリには社内ネットワークからのみアクセスを許可し、SNSやコミュニケーション系アプリには柔軟なアクセスを認めるといった設定が行えます。これにより、業務効率を下げることなく、重要情報へのアクセスリスクを低減することが可能です。

実装のポイント

  1. リスクベースのアプローチの採用:全ユーザーに一律の制限を課すのではなく、リスクに応じた対応を行うことで、利便性とセキュリティのバランスを取ります。
  2. 段階的な導入:最初からすべてのユーザーに厳格なポリシーを適用するのではなく、特定の部門やシステムから段階的に導入することで、業務への影響を最小限に抑えられます。
  3. ログとモニタリングの活用:Entra IDのログ機能を活用し、ポリシーの適用状況やアクセス状況を常に可視化・監査することで、ポリシーの適正化やインシデント対応に役立てます。

まとめ

Entra IDと条件付きアクセスポリシーは、企業のゼロトラスト戦略を実現する上で不可欠な基盤です。ユーザーやデバイスの状態を考慮した動的なアクセス制御を通じて、強固なセキュリティと高い業務効率を両立できます。今後ますます高度化するサイバー攻撃に備え、こうした認証基盤の整備は喫緊の課題と言えるでしょう。