Windows Server 2016で学ぶActive Directory入門:構築からドメイン参加まで

目次
【導入】
業務システムにおけるユーザー管理やアクセス制御に欠かせないのが「Active Directory(以下、AD)」
です。特にWindowsを中心とした企業環境では、ADの知識はインフラエンジニアにとって不可欠です。
一方で、「名前は知っているけど、実際に構築したことがない」「何が便利なのか、ピンとこない」という声も少なくありません。ADはGUI操作中心でとっつきやすい反面、構造の理解が浅いと運用で躓くこともあります。
本記事では、Windows Server2016を用いたAD構築から、実際のドメイン参加までの手順やポイントを丁寧に解説します。
現役エンジニアの視点で、学習の進め方や実務へのつながり方も紹介します。
【本文】
❶.Active Directoryとは何か?
Active Directoryは、MIcrosoftが提供するディレクトリサービスで、ユーザー、コンピュータ、グループなどの情報を一元管理する仕組みです。
主な役割は以下の通り:
⭐ドメインコントローラーを中心とした認証管理
⭐ユーザーアカウントやグループポリシーの集中管理
⭐組織単位(OU)による断層的なリソース管理
⭐ログイン情報の統合で【シングルサインオン(SSO)】を実現
これにより、大規模な企業ネットワークでも、煩雑な管理作業を効率化できます。
❷.Active Directoryの構成要素
🌳ドメイン:ADの管理単位。社内ドメイン名(例:corp.local)で構成
🌳ドメインコントローラー(DC):ADを管理するサーバ
🌳OU(組織単位):管理対象を分ける仮想フォルダのようなもの
🌳グループポリシー(GPO):ユーザーやPCに対する制御ルール
🌳DNS連携:ADは内部DNSと密接に連携して動作
これらの構造を押さえておくと、構築時やトラブル対応時に非常に役にたちます。
❸.Windows Server2016でのAD構築ステップ
【1】Windows Serverの準備
・Windows Server2016をインストール
・コンピュータ名を適切に設定(例:DC01)
・固定IPアドレスの設定(DHCPは避ける)
・時刻同期(NTP)の確認(ADの動作に重要)
【2】AD DS(Active Directory Domain Service)の役割追加
・サーバマネージャを開く➡「役割と機能の追加」
・「Active Directoryドメインサービス」を選択
・必要に応じてDNSも同時に追加
【3】ドメインコントローラーの昇格
・ルートドメイン名を設定(例:corp.local)
・DSRMパスワードを設定(復旧時に使用)
・再起動して構築完了
❹.クライアントのドメイン参加
ADの構築が終わったら、次はクライアントPC(Windows 10/11)をドメインに参加させてみましょう
・クライアントのDNS設定をDCのIPに変更
・コンピュータ名の確認と設定(例:PC001)
・「このPCをドメインに参加させる」からcorp.localを入力
・認証ユーザ名(例:Administrator)ろパスワードを入力
成功すれば再起動でドメインログイン可能に
👍ポイント:DNSが通っていないとドメイン参加に失敗します。
クライアント➡DC間の通信確認(ping,nslookup)は必須です。
❺.よくあるトラブルと対処法
症状 原因 対処法
ドメインに参加できない DNS設定ミス クライアントのDNSをDCのIPに
DCが見つからない サービス未起動AD DSサービスを確認
ポリシーが反映されない レプリケーション遅延 gpupdate/forceで更新
Active Directoryのトラブル対応には「ネットワーク+Windows OS+サービス管理」の複合スキルが必要です。構成図を見ながら問題の切り分けができるようにしておきましょう
➏.学習のステップとおすすめの環境構築方法
・VirtualBoxやHyper-V上に仮想Windows Server環境を用意
・DC・クライアントの2台構成でドメイン参加まで行う
・OU・ユーザー・GPO設定まで試す
仮想環境なら、ミスしてもすぐにやり直せるため、ADの仕組みを深く理解できます。
【まとめ】
Active Directoryは、単なる「サーバの機能」ではなく、企業ITの中核を担う”組織の中の仕組み”そのものです。
構築して終わりではなく、ユーザー管理・アクセス制御・セキュリティ統制など、組織の情報インフラの運用に直結するスキルです。
特にWindows Server2016は、学習用・検証用としても十分な機能を持っており、ADの仕組みを理解するにはうってつけの環境です。
インフラエンジニアとして一歩先に進むために、まずは「自分でADをたてて、ドメイン参加まで実施」してみるところから始めてみてください。GUI操作に慣れた後は、PowerShellによる自動化やバックアップ・復旧にも挑戦すると、より実務に近いスキルが身に付きます。
次なるステップとしては、グループポリシーの詳細制御や、ADとAzure ADの連携(ハイブリッド構成)なども学んでいくと、オンプレとクラウドの橋渡しができる人材へと成長できます。