VB.NETからのリプレイス体験談:リバースエンジニアリングの進め方

こんにちは。今回は、私が実際に担当した「VB.NETからC#・ASP.NETへのリプレイス案件」について、現場で直面した課題や、リバースエンジニアリングの具体的な進め方をご紹介します。
目次
レガシーとの出会い

プロジェクト開始時、引き継いだのは10年以上運用されてきたVB.NET製の業務アプリケーション。設計書や仕様書はほぼなく、頼りになるのは膨大なコードと、ユーザーからの口頭説明のみでした。
当初はどこから手を付けるべきか途方に暮れましたが、動いているソフトがある以上、リバースエンジニアリングで現状を正確に把握することが最優先だと判断しました。
リバースエンジニアリングの進め方
画面・機能の洗い出し
まず、現行システムの「見える部分」から手を付けました。
実際にアプリを操作しながら、以下の情報を表形式で整理しました:
- 画面名とその役割
- 実行される処理(登録、検索、帳票出力など)
- 使用しているデータベーステーブル
- 業務上の重要度と利用頻度
これにより、優先度の高い機能から解析・再設計を進める方針が明確になりました。
動作確認+ログ出力
コード全体を読み解くのは非効率と判断し、まずは実際に動かして挙動を確認。
イベントトリガーの位置や、DBアクセスが発生するポイントをログ出力で追跡し、「この処理はこの画面で実行される」といった対応関係を少しずつ明らかにしていきました。
データベースとのつながりを調査
VB.NETのコード内にはSQLが直接書かれている箇所も多く、手作業でWHERE句やJOIN句を読みながら、各画面がどのテーブルを参照・更新しているかをまとめました。
この情報はC#・ASP.NETでの再構築時にも設計の基礎資料として役立ちました。
課題と工夫
コメントがないコードへの対処
コメントが少ないコードは、特に初見では読みづらく、目的や背景が分かりません。
そこで「まず動かして確かめる」「コードに仮説を書きながら読む」「命名のクセを記録する」などの手法で、意図を少しずつ把握していきました。
命名・構造の再整理
C#・ASP.NETへ移行するタイミングで、クラス・関数名、変数名を業務用語に揃えるよう整理。
また、MVCモデルに従い、View・Controller・Modelの役割を明確に分けることで、後から見ても分かりやすい構成を意識しました。
ASP.NETリプレイスで得られた気づき
VB.NET時代のアプリは「とにかく動くこと」を優先しており、責務の分離や再利用性はあまり意識されていませんでした。
一方、C#とASP.NETでは、構造が自然と整理されるよう設計されており、以下のようなメリットがありました:
- 責務が明確になり、保守しやすい
- 画面とロジックの分離により、UI変更が柔軟に
- 型安全な記述ができ、バグが減少
また、リプレイス中に「なぜこのような仕様だったのか?」を考えることで、業務の本質的な要件に立ち返る機会にもなりました。
おわりに

レガシーシステムのリプレイスは、決して単なる「書き換え」ではありません。
リバースエンジニアリングを通じて、過去の知見や業務ノウハウを受け継ぎつつ、新しい技術でよりよい形に進化させる作業です。
今回の経験を通じて、表面的な動作だけでなく、「なぜそうなっているのか」を読み解く力が身についたと感じています。
今後も、古い資産を活かしながら、価値あるシステムづくりを続けていきたいと思います。