下流工程と上流工程の違いは?それぞれの仕事の流れ、必要な能力について解説

エンジニアの仕事には、システム開発の工程を区別するために上流工程と下流工程という言葉が使われます。上流工程は前半の作業、下流工程を後半の作業と区分できます。
未経験のエンジニアは下流工程からキャリアをスタートさせ、十分な経験を積んでから上流工程に進むのがキャリアアップの一般的なルートです。
しかし上流工程を目指すエンジニアのなかには、下流工程からなかなか抜け出せず、キャリアの停滞に悩む方も少なくありません。
そこで本記事では、下流工程と上流工程の違いを解説しつつ、エンジニアとして上流工程を目指すために必要不可欠な要素をお伝えしていきます。
ぜひ最後まで読んで、下流工程でさらなる活躍を目指すとともに、将来的なキャリアアップの参考にしてみてください。
目次
下流工程の流れ

下流工程の業務の種類には、開発や製造、テストや納品などがあります。これらは、経験の浅いエンジニアが担当することが一般的です。
上流工程では、クライアントの要望を実現させるために詳細設計やプログラム設計が作られます。それらを実際にコーディングして、システムを構築するのが下流工程のエンジニアの仕事です。
それでは業務全体の流れを把握するために、業務の種類を一つひとつ詳しく解説します。
開発や製造
開発や製造の工程では、上流工程の段階で作成された要件定義書や設計書に基づいてプログラミングのコーディングを行います。プログラマーが中心になって行う作業で、コーディングには多くの時間を費やすため、多くのプログラマーが分業して行います。
テスト
開発や製造の次に行う作業がテストです。テストには次のような種類があります。
- 単体テスト
- 結合テスト
- システムテスト
単体テストとは、作成したモジュールごとに、設計書で定められた要件と機能を満たしているかを検証する作業です。ここでもしもバグが発生した場合は修正が必要となります。
結合テストは、複数のモジュールを組み合わせてシステム全体の機能や性能を検証する業務です。インターフェースやデータのやり取りなどに問題がないかどうかをチェックします。
システムテストとは、システムを実際の運用環境に近い条件でテストする業務です。ユーザーの視点からシステムの動作や仕様を検証するのが特徴です。
納品

納品の段階では、テストで納品可能となったシステムを、実際の稼働環境に移行します。納品の仕方には複数の方法があります。
例えば、特定のタイミングでシステム全体を一気に移行する方法や、機能単位ごとに徐々に移行する方法などです。
上流工程で指示される方法に従って納品作業を行います。
上流工程の流れ

上流工程はプロジェクトの方向性を決める重要な工程です。基本的に実務経験が豊富でスキルの高いエンジニアが担当します。
業務は、企画と要件定義、そして基本設計と詳細設計までの工程です。クライアントにヒアリングを行い、要望を実現可能なレベルに落とし込みます。
その後、下流工程でエンジニアが問題なくコーディングできるよう、細かな設計を行います。システム開発の基盤となる重要な工程です。
これらの工程について詳しく説明します。
企画
企画の段階で行うことは、クライアントの課題や要望を丁寧にヒアリングして解決策や方針を提案することです。
要望を正確に把握し、専門知識と経験に基づいて、適切な解決策を導き出すことが重要です。
要件定義
要件定義では、システムに求められる機能や性能を明確に定義します。プロジェクト全体の方向性が決まったら、システム化の範囲や機能、業務全体の枠組みを明らかにします。
チームの業務分担をはじめ、多角的な要素を考慮する必要があり、担当するプロジェクトマネージャーやリーダーは幅広い経験と知識が要求される場面です。高いコミュニケーション能力も求められるでしょう。
基本設計や詳細設計

基本設計では、システムの全体像や構成と機能や仕様を、プログラムが実装できるように細かく設計します。詳細設計とは、システムの内部構造や動作、アルゴリズムやモジュールなどを詳細に設計する業務のことをいいます。
上流工程を担当するのはプロジェクトマネージャーやシステムエンジニア、ITコンサルタントなどです。
下流工程と上流工程の違い

システム開発の工程を大きく分けると、開発の前半を上流工程、開発の後半を下流工程といいます。
上流工程はシステムの要件や設計を決める作業をし、下流工程は上流工程で決めた内容をもとに、システムの実装やテストの作業を行います。
業務内容
業務内容の違いを、上流工程と下流工程に分けて解説します。
上流工程の業務内容は、システムの目的や機能、性能などを定義する要件定義を行うことです。また、システム開発プロジェクト全体の内容を決定、管理します。
最終的にシステムの全体像や仕様を設計する基本設計や詳細設計まで行います。
一方、下流工程の業務は、設計書に基づいてプログラムを作成することです。開発やシステムの動作や品質を確認するためのテスト業務も含まれます。上流工程で決定された要求や指示にしたがって業務を行います。
担当者や事業者
上流工程を担当するのは、システムエンジニアやプロジェクトマネージャーなどです。下流工程はプログラマーやテスターなどが担当します。
上流工程の事業者は、プロジェクトが大規模な場合は大手Sler(システムインテグレーター)のような大企業です。プロジェクトの全体像を設計し、各工程を統括します。
下流工程の事業者は、下請けや関連会社の中小企業で、システム開発の一部分を担当します。
ここで上流工程と下流工程に携わるエンジニアのスキルの違いについて把握しておきましょう。上流工程では、クライアントとの折衝やコミュニケーションスキルが求められるほか、ビジネスや業務の深い知識が必要となります。
さらにプロジェクト管理や見積もりのスキルなども要求されるでしょう。
それに対して、下流工程のエンジニアに求められるスキルはプログラミングやテストを行う技術、さらに効率的な作業を行うことなどです。
下流工程で活躍するために必要な能力

下流工程では、開発現場でのシステム構築や保守に直接関わります。プログラミングやテストが中心で、基本的な技術スキルが求められます。
したがって、下流工程で活躍するには情報技術の知識やプログラミング能力、論理的な思考力が必要となります。
以下に一つひとつ詳しく解説します。
情報技術の知識
下流工程で成果を上げるためには、情報技術の基礎知識が必要です。具体的には開発言語に堪能であることがあげられます。正確な情報をもとにして、問題へ対処する必要があります。そのためにも情報技術の知識を幅広く身につけておきましょう。
また、エンジニアとして効率的に学習する力が求められます。例えば、専門書を読んでサンプルコードを走らせたり、同じプログラムでもより効率よく問題解決できる方法はないかを調べたりするなどです。
プログラミング能力
設計書の内容を論理的に理解し、正確に実装する技術が必要になります。下流工程のエンジニアは使用するプログラミング言語やフレームワーク、ツールには、日頃から慣れておくことが大切です。
論理的な思考力
先ほどと重なる部分がありますが、下流工程では、論理的な思考力も重要な能力の一つです。それは設計書の内容を正しく理解して実際に作成できなければならないからです。
論理的な思考力を鍛えるためにも、日頃からコーディングをしたり、問題意識を持ったりするようにしましょう。
上流工程で活躍するための能力

上流工程で活躍するためには主に次のような能力が必要だとされています。
- 要件定義能力
- プロジェクトマネジメント能力
- コミュニケーション能力
要件定義能力は、エンジニアとして今後作成するものを正確に示すためにとても重要です。システム作成後にクライアントの要求と異なると判明した場合、すべてをやり直さなくてはならない可能性が生じてしまいます。
要件定義の段階でクライアントから要求事項を丁寧にヒアリングし、お互いの理解が一致するようにしましょう。
次に必要なのは、プロジェクトマネジメント能力です。プロジェクトはチーム単位で行うため、上流工程のエンジニアは下流工程のエンジニアに指示をしたり、マネジメントしたりする必要があります。
そのため、チームをまとめる力が重要になってきます。また、作業の分担方法や進捗管理、指示出しなどの役割も必要です。
エンジニアにとってさらに重要なのはコミュニケーション能力です。プロジェクトの遂行においては、クライアントやプロジェクトのメンバーなど、さまざまな方とコミュニケーションを取りながら仕事を行うことが少なくありません。
クライアントのニーズをしっかり読み取る力はよいものを作りあげるためには欠かせない能力です。
下流工程から上流工程に上がるためにできること

下流工程から上流工程にキャリアアップすることは、現実的に可能なのか疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
ここではキャリアアップのための具体的な方法を、3年の実務経験を積むことと資格取得、さらに転職の3つのポイントに絞って解説します。
3年の実務経験を積む
一般的に下流工程から上流工程に上がるためには3年の実務経験を積む必要があるといわれています。
技術職であるエンジニアのスキルや経験が実務として認められるためには、それなりの年月を要します。
エンジニアを大まかに分類すると、開発系エンジニアとインフラ系エンジニア、そしてIT関連職に分けられます。そのうち上流工程に行きやすいのはインフラエンジニアです。開発系エンジニアは指示が上から来るのに対して、インフラ系エンジニアは作業に対する要求や評価が下から来ることが少なくありません。
下流工程にいながら上流工程にも関わりやすいことが、インフラエンジニアの方が上流工程に行きやすい理由です。
実務経験を3年積むことはあくまで目安です。ただ年数を重ねただけでは上へ上がることは容易ではありません。以下にさらに詳しく解説します。
資格を取得してキャリアアップする

実務経験がない、もしくは経験の浅いエンジニアでも、難易度の高い資格を早い段階で取得しておくとスキルのアピールになります。
資格はキャリアアップに有利ですが、実際に現場で活かし、どう行動するかが評価されます。
以下のような資格を取得すると、上流工程の仕事で役に立ちます。
- 応用情報技術者試験
- システムアーキテクト試験
- プロジェクトマネージャ試験
- オラクルマスター
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験より深い内容が出題されます。システムアーキテクト試験は、システムアーキテクトの業務と役割を遂行する知識やスキルを認定する試験です。
プロジェクトマネージャ試験は、メンバーを成長させるマネージャーを目指す方向けの試験で難易度は高めです。オラクルマスターはデータベースの管理スキルを認定する資格で、ブロンズからプラチナまで4つの段階に分かれています。
私たちテクニケーションでは、資格取得支援制度を充実させており、難関資格にも無理なくチャレンジできる環境を整えています。スキルアップを目指すエンジニアの方々にとって働きやすい環境です。
またチーム制を採用しているため、実務経験が浅くても、安心感を持って学びながら成長することができます。これにより、ベテランエンジニアのサポートを受けながら、効率的にキャリアアップを目指すことができます。
「資格を取得してキャリアアップしたい」「専門性を高めて案件の幅を広げたい」という方は、ぜひ一度テクニケーションのカジュアル面談でお話ししましょう。
チーム制を導入しているSES企業に転職する

上流工程に上がることを目指す方におすすめなのは、チーム制を導入しているSES企業に転職することです。
その理由は、経験の浅いエンジニアが単身でよい案件を獲得するのは簡単ではないためです。加えて、チーム制ならスキルアップを目指すエンジニア自身の心理的な負担も軽減できるメリットがあります。
スキルに不安があってもチーム制であれば、ベテランと中堅のエンジニアが若手のサポートと育成の両方を担うことができます。クライアントに負担をかけることもありません。
キャリアアップに成功すると、マネジメントやコンサルティングなどの、高次の役割に挑戦できます。上流工程のスキルを持つエンジニアは要件定義や設計、プロジェクト管理などの業務に対応できるため、多くの企業から高く評価されます。
エンジニアとしての市場価値が上がり、報酬や待遇の向上が期待できるでしょう。
チーム制を導入しているSES企業を選ぶならテクニケーションがおすすめです。私たちテクニケーションの強みはチーム制を導入していることです。
チーム制の特徴は、未経験の領域にも挑戦できることと社内の経験を積んだスペシャリストからサポートが受けられることです。自身の市場価値を高めるマネジメント経験を積むチャンスがあります。
また、テクニケーションでは資格取得支援制度で支援している資格があり、上述の基本情報技術者や応用情報技術者試験とプロジェクトマネージャ試験も対象になっています。
理想の働き方をぜひテクニケーションで実現しましょう。
下流工程からキャリアアップしたいなら上流工程の案件があるSES企業を選ぼう

下流工程から上流工程へキャリアアップするためには、上流工程の案件を保有しているSES企業を選ぶことが重要です。
キャリアアップには、3年の実務経験を積むことと資格取得、さらにチーム制を導入しているSES企業への転職がとても大切であるとお伝えしました。
転職で失敗しないためには、自分のスキルや経歴をまとめ、企業情報の十分なリサーチを行うことが欠かせません。
特に、現在下流工程の業務に携わっている方の場合は、収入や案件選択の自由度やスキルアップの支援体制が整っているかどうかを調べておくとよいでしょう。
私たちテクニケーションでは、案件選択制を導入しています。エンジニア一人ひとりのキャリアやビジョン、スキルに応じて、自由に案件を選ぶことが可能です。
各案件のリーダーを目指した働き方もできるため、キャリアアップができます。
さらにテクニケーションではチーム制を採用しているため、ベテランエンジニアのサポートを受けながら働くことができる点も大きな魅力です。経験豊富なメンバーとともに実務経験を積み、あなたが目指すキャリアを叶えましょう。
「下流工程のままでは将来が不安」「上流工程の経験を積んで、よりよい案件や報酬を得たい」というエンジニアの方は、ぜひ私たちテクニケーションのカジュアル面談でお気軽にご相談ください。