システム構築時のエラーから学ぶ:手順書修正プロセスとトラブルシューティング

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【導入】

インフラエンジニアとして構築業務に携わる際、避けて通れないのが手順書との向き合い方です。
多くの現場では、既存の手順書をベースに作業を進めることが一般的ですが、
実際の環境や用件に完全に一致する事は稀であり、「エラー発生→原因調査→手順書修正」の流れを経験したことがある人は多いはずです。

ときには手順書通りに進めても構築に失敗したり、微細な環境差異が原因で意図しない挙動が発生することもあります。こうしたトラブルに直面したときに、どのように対処し、学びを次に活かしていくかが、エンジニアとしてのスキルを大きく左右します。

本記事では、システム構築時の典型的なエラーとそのトラブルシューティング方法、

そして再発防止に向けた手順書修正のプロセスについて、現場経験をもとに具体的に解説します。

【本文】

❶.なぜ“手順書”通りでもエラーが起きるのか?

「手順書に従っているのにうまくいかない」という経験は、構築作業では珍しくありません。原因として多いのは次のようなケースです。:

⭐️バージョン違いによる挙動差(OS、ミドルウェア、ツール)
⭐️前提条件の未記載(サービスが未起動、依存パッケージ不足)
⭐️ネットワーク設定やファイアウォールの差異

⭐️手順の誤りや実行ユーザー指定ミス

これらは一見些細な違いに思えますが、構築作業では命取りになり得ます。

特にクラウド(AWSなど)では、テンプレートの自動化が進む一方で、前提条件の検証が不足すると失敗の原因になります。

❷.トラブルシューティングの実践プロセス

構築中にエラーが発生した場合、冷静かつ体系的なアプローチが求められます。

①エラーメッセージの記録と読解

まずはエラー内容を正確に記録する。ログの取得・コマンド結果のスクリーンショット・タイムスタンプなども忘れずに残します。

②原因の切り分け

「何が原因かわからない」状態に陥る前に、以下の観点で切り分けを実施:


⭐️実行環境の問題か(OS、仮想基盤)
⭐️前提条件を満たしているか

⭐️入力内容(コマンドや設定ファイル)が誤っていないか

⭐️タイミング・順序に依存していないか

③ネットでの調査とログの読み方

Linuxであれば/var/log配下、Windowsであればイベントビューアが基本。

エラーコードやキーワードで公式ドキュメントやQiita、Stack Overflowなどを参照するのも有効です

④変更前の状態に戻せるよう記録を残す

リカバリーのため、変更履歴(diffや before/afterの状態)を残しておくことが重要です。

❸.エラーを“学び”に変える:手順書修正のコツ
構築作業中に得た気づきや対応策は、必ず手順書に繁栄するべきです。
その際、ただ追記するだけでなく、次の点に注意することで“より使える”手順書になります。


①修正は「背景」も含めて記載する

例:
❌service nginx start追加

✅nginx.serviceがデフォルトで無効になっているため、サービスを明示的に起動

②バージョンや環境依存の情報は明確に使い分ける
→“この手順はUbuntu20.04用”“AWS EC2 t3.mediumで動作確認”など、前提条件を明記

③手順の順序・実行ユーザーを具体化する
→sudoの有無、root/一般ユーザーなどの違いを明示。

④差分をコメント形式で残す運用

複数人で手順書を扱う場合は、「なぜ変更したか」をコメントとして記述することで、将来的なメンテナンス性も向上します。

❹.エラー対応を組織の資産にする仕組み化
一度対応したエラーは、ナレッジとして蓄積し

再利用できるようにすることが理想です。

以下のような取り組みが効果的です:

⭐️RedmineやBacklogなどに“トラブルログ”を記録

⭐️手順書のバージョン管理(GIthubやConfluence)
⭐️定期的なレビュー会議での共有

⭐️「エラー事例集」としてのテンプレート化

属人的な知識を「見える化」し、誰でも参照できるようにしておくことが、
インフラチーム全体の品質を底上げします。

【まとめ】

システム構築時のエラー対応は、精神的にも時間的にも負担が大きく、

プレッシャーを感じる場面も少なくありません。

しかし、そうしたトラブルこそが、実務を通して得られる最大の学びの機会でもあります。

手順書に従うだけではなく、その背景を理解し、自ら改善・補完できる力を持つことが、エンジニアとしての成長に直結します。

構築作業での失敗や試行錯誤の経験を、記録し、反映し、再利用出来る形に変える。

それこそが、インフラエンジニアとしての“本物のスキル”を磨く第一歩です。