クラウドエンジニアに聞いてみた!いきなりクラウドはあり?

目次
はじめに
最近、IT業界では「クラウドが伸びている」「需要が高いからクラウドをやりたい」という声をよく聞きます。特にエンジニアを目指す方や、現在監視オペレーターとして働いている方からこのような相談を受けることが増えています。しかし、本当にクラウドから始めることが最適な選択なのでしょうか?
今回は、実際の現場経験を持つエンジニアの方々との対談を通じて、キャリア形成における「クラウドファースト」の課題と、より効果的な成長戦略について考えてみたいと思います。
クラウドブームの現実
すでに浸透したクラウド技術
「クラウドの需要が伸びている」という表現は、実は少し古い認識かもしれません。現在では、クラウド技術はすでに十分に浸透し、スタンダードな技術となっています。5年前であれば確かに「伸びている」という表現が適切でしたが、今やAWSエンジニアも珍しい存在ではありません。
オンプレミスの需要は消えない
一方で、オンプレミス環境の需要が完全になくなることはありません。これは単純に、お客様の要件に応じてオンプレミスかクラウドかを選択するという話です。どちらか一方に偏った視点では、キャリアの選択肢を狭めてしまう可能性があります。
「クラウドファースト」の落とし穴
1. チャンスの取りこぼし
クラウドのみに絞って営業をかけることで、多くのチャンスを取りこぼしてしまう可能性があります。特に経験の浅い段階では、選択肢を広く持つことが重要です。
2. クラウドいきなり参入の困難さ
クラウド環境では、一つのコンソールで全てのインフラを管理できる設計になっているため、少ない人数でシステムを設計・構築する現場が多くなります。その結果、一人当たりの担当範囲が広くなり、以下のような幅広い知識が同時に求められます:
- セキュリティ
- ネットワーク
- サーバーOS設計
- その他のインフラ全般
3. 学習範囲の拡大
クラウドから学習を始めると、結局OSなどの基礎的な部分も学ぶ必要があるため、学習範囲が一気に広がってしまいます。これは初学者にとって大きな負担となる可能性があります。
オンプレミスから始める利点
専門性を深く学ぶ機会
オンプレミス環境では、通常以下のような専門チーム構成になっています:
- サーバーチーム
- ネットワークチーム
- ミドルウェア製品ごとの担当者
この環境では、まず一つの分野(例:OS設計)に集中して技術を深く学ぶことができます。周囲の技術者から知識を吸収しながら、段階的にスキルアップしていくことが可能です。
基礎理解の重要性
実際の現場での体験談として、クラウド研修のみを受けた新卒エンジニアがオンプレミス案件に参加した際、「オンプレミスがあるからクラウドがあるんだということが理解できました」と述べたケースがあります。
基礎となるオンプレミスの仕組みを理解していないと、クラウドの真の価値や利便性を説明することができません。
問題解決能力の向上
オンプレミス環境では物理構成図や論理構成図を頭に描きながら作業するため、問題が発生した際の原因究明や解決アプローチが身につきやすくなります。クラウドでは抽象化されている部分が多いため、基礎的な理解なしには問題解決が困難になる場合があります。
技術の置き換えと共通概念
オンプレミスからクラウドへの移行は、多くの場合「技術の置き換え」として理解できます:
- 監視: Zabbix → CloudWatch
- バッチ処理: Bashスクリプト → Lambda + Python
- スケジューリング: Cron → EventBridge
基本的な考え方や概念は共通しているため、オンプレミスで身につけた知識は確実にクラウドでも活用できます。
推奨するキャリア戦略
1. 焦らず着実に進む
30歳前後でリーダーポジションに就くことを考えると、7-8年程度の積み上げ期間があります。3年で急激に成長しようとするより、着実に基礎を固めていく方が結果的に良い結果につながります。
2. 資格取得による知識補完
インフラ系の各ベンダーが認定資格を提供しているため、これらを活用して基礎知識を補完することが効果的です:
- OS: LPIC、Linux+
- ネットワーク: CCNA
- クラウド: AWS、Azure認定資格
3. 段階的なスキルアップ
- オンプレミス案件で基礎を固める
- 並行してクラウド資格を取得
- 次のステップでクラウド案件に挑戦
このような段階的なアプローチにより、選択肢を狭めることなく着実にスキルアップしていくことができます。
まとめ
「需要が高いからクラウドをやりたい」という気持ちは理解できますが、焦って選択肢を狭めることは得策ではありません。特に経験の浅い段階では、オンプレミスで基礎をしっかりと固めることが、長期的なキャリア形成において重要です。
クラウド技術の習得は確実に価値がありますが、それは基礎的な知識があってこそ真価を発揮します。急がず、着実に、そして戦略的にキャリアを形成していくことが、結果的に最も効率的な成長につながるのではないでしょうか。
焦りを無謀な挑戦ではなく、資格学習や自己学習に向けることで、より確実な成長を実現できるはずです。