インフラ運用保守の現場:イベントログ監視と障害対応のリアル

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【導入】

企業のIT基盤を支えるインフラ運用保守の現場では、日々多種多様なトラブルや予兆と向き合う事が求められます。なかでも、WindowsやLinuxサーバー、ネットワーク機器から出力される「イベントログ」の監視は、障害の早期発見や根本原因の特定に欠かせない業務です。

しかし、「ログを見てはいるが活用しきれていない」「障害が起きたときにどのログを見ればいいのかわからない」という声も少なくありません。

本記事では、現役インフラエンジニアとして日々運用保守に携わる立場から、イベントログ監視の現場での実践方法、トラブルシューティングのリアル、そして効率的な対応体制の整え方まで、実務に即した形で解説します。

【本文】

❶.なぜ、イベントログ監視が重要なのか?

サーバーやネットワーク機器、クラウド環境では、なんらかの異常が発生するとほぼ必ずログが記録されます。特にWindowsでは「イベントビューア」に、セキュリティログ、システムログ、アプリケーションログなどが記録されており、Linuxでも/var/log/ massagesやも/var/log/syslog、journalctlなどを通じて詳細な情報を得る事ができます。

これらのログは、以下のようなトラブルの予兆を教えてくれます。:

⭐️ディスク容量の逼迫

⭐️CPU/メモリ使用率の異常

⭐️ユーザーによる不正なアクセス試行

⭐️サービスやプロセスの停止

⭐️スケジュールバッチの失敗

⭐️ネットワーク断の発生

リアルタイムに監視・アラート設定を行うことで、問題が大きくなる前に対処できる体制を整える事が可能です。

❷.現場で使われるイベントログ監視ツールと手法

現場では、次のようなツールや手法が多く活用されています。

🗝Zabbix・Nagios・PRTGなどの監視ツール

各種ログファイルを監視対象に指定し、異常値やエラーメッセージを検出するとアラートを発報。

通常はSNMPやエージェントを通じてリアルタイム監視。

メール・Slack・Teamsなどへの通知設定も可能。

🔎Windowsイベントビューア+カスタムビュー

イベントIDやソースをフィルター指定することで、特定の障害やログイン試行などに絞って確認。

例:イベントID 4625(ログオン失敗)、7031(サービス終了)

📊ELKスタック(Elasticsearch/Logstash/Kibana)
複数サーバー・ログを統合管理し、可視化する仕組み。

リアルタイムな検索・グラフ表示が可能で、障害傾向分析にも活用。

@ポイントは「気になるイベントを、あらかじめフィルター定義しておくこと」です。これにより、ただ溜まるだけのログが振り分けられて「使える情報資産」に変わります。

❸.ログから読み解く障害対応の実例

🔥ケース1:Windowsサーバーの突然の再起動

【症状】アプリケーションサーバーが深夜に自動再起動、業務バッチが停止。

【ログ】イベントID1074(計画的なシャットダウン)により、

 Window Updateが原因と判明。

【対策】スケジュール変更+GPOで自動再起動を制限。

🔥ケース2:Linuxサーバーで不定期にSSH接続ができなくなる

【ログ】/var/log/secureに複数のFailed password for root from…ログを確認。

【対策】IP制限を強化し、fail2banでSSHブルートフォースを自動遮断。

🔥ケース3:共有フォルダへの接続障害

【ログ】WindowsイベントログにイベントID2017(セッション数上限到達)

【対策】ファイルサーバーの同時接続数を増加設定

このように、「ログが読める=現場での対応力が上がる」というのが、インフラ運用保守の基本スタンスです。

❹.ログ監視業務の効率化と体制整備

効率的なログ監視・障害対応体制を築くには、以下の工夫が有効です。

❗️障害発生時の初動手順書を整備する(テンプレート化)
❗️定例で「障害レビュー」や「ログ精読会」を実施する。

❗️監視ツールのアラートルールを定期的に見直す

❗️“検知検出から5分以内に一次対応”をKPI化する

また、属人化を防ぐために、ログの見方・よくあるエラーコード一覧・確認コマンド集などをナレッジとしてチーム内で共有しておくことも極めて重要です。

【まとめ】

イベントログは、ITインフラの健康状態を映し出す「体温計」のような存在です。

単なる記録の集まりではなく、障害の予兆・原因・影響範囲を解明するための最大の手がかりとなります。

インフラエンジニアとして一歩成長するためには、ログの構造や意味を理解し、

「どのタイミングで」「どのログを」「どう確認すればよいか」を体に染み込ませる必要があります。

運用保守の現場は、決して派手ではありませんが、ITシステムを止めずに支える“縁の下の力持ち”として欠かせない存在です。

日々の地道なログ管理とトラブル対応が、組織の安定稼働と信頼を支えているといえます。

今後、ゼロトラストやクラウドシフトが進む中でも、「ログを読み、活かす力」は普遍的なスキルであり続けます。あなたの現場でも、ぜひログ管理を“攻めの運用”へと変えてみてください。