インフラ若手の君へ。クラウドを学ぶとき何からすべきか?

クラウド技術の学習を始めたいと考えている方に向けて、現役エンジニア3名の対談から得られた貴重なアドバイスをお届けします。AWS一強と思われがちなクラウド市場で、どのような戦略を取れば効果的にキャリアを築けるのでしょうか。
目次
AWSだけが正解ではない?市場の変化を読む重要性
多くの人がクラウドと聞いて真っ先に思い浮かべるのはAWSでしょう。確かにAWSは圧倒的なシェアを持っていますが、現在の市場動向を見ると必ずしもAWS一択が最適解とは限りません。
注目すべき市場の変化:
- Microsoft Azure のシェアがAWSと肩を並べるレベルまで成長
- Google Cloud Platform(GCP)も着実に伸びている
- IBM系のクラウドサービスも存在感を増している
特にAzureについては、AWSエンジニアが豊富に存在する一方で、Azure経験者はまだ少ないのが現状です。これは逆にチャンスと捉えることができます。案件の総数が同程度であれば、相対的にAzure技術者の方が選択肢が多くなる可能性があります。
初学者が最初に学ぶべきこと
全くの初心者がいきなりクラウドサービスに飛び込むのは危険です。まずは基礎をしっかりと固めることが重要です。
基礎知識の重要性
- サーバーとは何かを理解する
- TCP/IPの基本概念を押さえる
- ITパスポートレベルの知識を身につける
これらの基礎知識なしにクラウドサービスを触っても、「自分が今何を作っているのか分からない」状態に陥ってしまいます。
オンプレ経験者の場合
既にオンプレミス環境での経験がある方は、どのクラウドサービスから始めても構いませんが、EC2から入ることをお勧めします。
EC2を推奨する理由:
- RDSやLambdaなど、多くのサービスがEC2ベースで動いている
- VPCの理解にもつながる
- シェル操作が必然的に身につく
- 総合的な学習効果が高い
セキュリティ意識の重要性
学習時から常に意識していただきたいのがセキュリティです。
よくある問題のあるハンズオン
ネット上には「とりあえず動かす」ことを目的としたハンズオン資料が多く存在しますが、これらの多くには問題があります:
- 最大権限での設定
- ポートの全開放
- セキュリティを軽視した構成
このような構成は学習には良いかもしれませんが、現場では全く通用しません。
インフラエンジニアの本質
インフラエンジニアの仕事の本質はセキュリティリスクを極力下げることです。機密性、完全性、可用性を保ちながらシステムを設計・構築することが求められます。
学習段階からこの意識を持つことで、実際の現場で活躍できるスキルが身につきます。
前職経験を活かしたキャリア戦略
Microsoft環境経験者の場合
社内SEでWindowsサーバーやActive Directory(AD)の経験がある方は、その経験を活かしてAzureに特化することをお勧めします。
戦略的なメリット:
- 履歴書でストーリー性が生まれる
- オンプレAD → Azure AD(現在のMicrosoft Entra ID)への自然な流れ
- Microsoft製品群(M365、Intune等)との親和性
Active Directoryの重要性
ADは単体でも立派な武器になります:
- Windows Server案件の多くでAD経験が求められる
- Azure AD、M365、Intuneすべてに関連する
- グループポリシーなど、一冊の書籍になるほど奥が深い
マルチクラウド戦略のススメ
最終的には複数のクラウドサービスを扱えるようになることが理想です。
段階的なスキル習得
- オンプレAD経験 → 基礎となる武器
- Azure習得 → Microsoft製品群との連携
- AWS習得 → 市場シェア最大のサービス
この順番で進めることで、無理のないキャリア形成が可能です。
マルチクラウドのメリット
- より多くの案件から選択可能
- 希望条件に合う案件を見つけやすい
- マルチクラウド環境の案件で重宝される
- 技術的な視野が広がる
まとめ
クラウドエンジニアとしてのキャリアを築く上で重要なのは:
- 基礎知識の習得を怠らない
- セキュリティ意識を常に持つ
- 前職経験を活かした戦略的な学習
- 市場動向を意識したスキル選択
- 最終的にはマルチクラウド対応を目指す
AWS一択ではなく、自分の経験や市場の状況を踏まえて戦略的にスキルを積み上げていくことが、成功への近道となるでしょう。