アプリケーションライフサイクル管理(ALM)ツール:インフラ視点での活用方法

目次
【導入】
アプリケーション開発の現場では、設計から開発、テスト、運用、保守に至るまで、一連のプロセスを一元的に管理する必要があります。
これを体系化した考え方が「アプリケーションライフサイクル管理(ALM)」です。
従来、ALMは開発者やプロジェクトマネージャー向けの領域とされがちでした。
しかし、近年ではDevOpsの普及やクラウドネイティブの流れを受けて、インフラエンジニアもALMツールの活用が求められる場面が増えてきました。
本記事では、インフラの視点から見たALMツールの価値や活用方法について、自身の経験も交えながら詳しく解説します。
【本文】
❶.ALMとは?その全体像と目的
ALM(Application Lifecycle Management)とは、
アプリケーションの構想・要件定義から開発・テスト・運用・廃止に至るまでのライフサイクル全体を対象とし、各工程を横断して情報を統合・共有・管理する枠組みを指します。
代表的なALMツールには、以下のようなものがあります。:
⭐️Atlassian Jira:タスク・バグ・進捗管理
⭐️Gitlab/GitHub Enterprise:リポジトリ管理とCI/CD
⭐️ Azure DevOps:要件、コード、テスト、デプロイまでの統合管理
⭐️ServiceNow ITBM:インシデントから変更管理までの業務連携
ALMツールは、単なる開発支援にとどまらず、全関係者間の情報共有と品質保証を実現するための鍵となります。
❷.インフラエンジニアがALMに関わる理由
インフラチームの業務は、単にサーバやネットワークを構築・運用するだけではありません。システム開発やサービス運用のスピード感が増す中で、開発との連携や構成管理、CI/CDパイプラインとの統合など、多くの業務がALMの枠組みに含まれるようになっています。
特に以下のような場面で、ALMツールがインフラ側でも活躍します。
構成管理の自動化(IaC)
例:
🟢TerraformやAnsibleのコードをGitlabで管理し、MR(マージリクエスト)ベースで
レビュー・承認プロセスを統一
🟢障害・変更管理の透明化
🟢インシデント発生時の影響調査・記録をJiraやSeerviceNowで一元管理
🟢テスト環境の迅速な構築
🟢CI/CDデプロイ定義により、ステージング環境が自動で構成される。
🟢コンプライアンスやセキュリティ要件への対応
誰が、いつ、何を変更したかを履歴で追える体制をALMで構築。
❗️このように、インフラもアプリ開発のライフサイクルに密接に関わる立場となりつつあるのです。
❸.実際にALMツールをどう活用しているか?
私の関わっていた業務では、主に以下のような形でALMツールを活用していました:
🔵Jiraを使ったタスク進捗の可視化
🔵繰り返し発生するインフラ課題をストーリーやチケット単位で管理し、
原因分析から改善までを記録。開発チームと共通のダッシュボードを使うことで、
部門間の連携がスムーズに。
🔵GitLab+CI/CDで構成管理を自動化
🔵仮想マシンのデプロイやAWS環境の構成変更を全てIaCで記述し、
マージされるたびにCIで検証・自動適用
🔵ServiceNowとの連携
🔵手順書通りの作業でも、変更申請と実施記録をServiceNowで一元管理。
万が一のトラブル時にも影響範囲がすぐ特定できる体制を構築する。
❗️このような仕組みによって、「誰が」「どこで」「何をしたか」が
明確かつ透明になり、信頼性と保守性が格段に向上しました。
❹.インフラ視点でのALM導入のポイント
インフラチームがALMツールを導入・活用する際のポイントは以下の通りです。:
⭐️開発と共通言語を持つこと
⭐️Jiraのチケット設計やGitのブランチ戦略など、開発と同じ土俵に立つ意識が必要
⭐️運用ルールとテンプレートの整備
⭐️チケットの粒度、命名規則、レビュー体制などを明確にすることで、定着しやすくなります。
⭐️「手順の見える化」と「責任の明確化」
➡️作業の流れをALMツールに落とし込むことで、属人化を防止し、ナレッジ共有が進みます。
⭐️教育とチームの巻き込み
➡️導入時にはトレーニングや社内勉強会を実施し、「便利に使える」と感じてもらう工夫が重要です。
ALMの仕組みはあくまでツールであり、運用に載せるための設計と文化の定着が成功の鍵となります。
【まとめ】
アプリケーションライフサイクル管理(ALM)は、もはや開発チームだけのものではありません。インフラエンジニアにとっても、構成のバージョン管理、障害の履歴記録、自動化されたデプロイ、そして品質担保の全てが、ALMツールを通じて可能になります。
私自身、これらのツールを活用することで、タスクの見える化やエラーの予防、開発との連携強化といった多くのメリットを実感しています。
これからインフラエンジニアとしてより高いレベルを目指す方には、ALMツールの
理解と実践活用が新たな武器になることは間違いありません。
ぜひ、日々の業務に少しずつ取り入れて、次世代のインフラエンジニアとしてのスキルを磨いてみてください❗️